地方の経営相談で、東京のコンサルが刺さらないのはなぜか
地方特化を名乗るコンサルの多くは東京にいます。手法ではなく前提のズレが「刺さらない」を生む構造を、新聞出稿のエピソードから整理します。
- 東京のコンサルが刺さらないのは、能力の問題ではなく、前提としている情報環境・市場構造が地方と違うからです。
- 地方では「認知」の前に「信頼」がある。この順番の違いを踏まえない手法は、理屈が正しくても機能しないことが多い。
- 地方特化を名乗るコンサルの多くは、東京に拠点があります。同じ制約の中で事業をしている相手かどうかは、選ぶときの一つの基準になると思っています。
「新聞?ネットじゃなくて?」というズレ
以前、首都圏のクライアントが地方に向けて認知を広げたいというとき、新聞への出稿を提案したことがあります。返ってきた言葉が「新聞?ネットじゃなくて?」でした。
地方では、新聞はまだ現役の情報インフラです。PCがない家にも、新聞は届く。実際、地方にはPCがなくても生活が普通に成立している家庭が一定数あります。首都圏ではPCのない家を思い当たらないくらいなのに、です。
つまり、情報との接点が最初から構造として違う。どちらが正しいという話ではなく、ターゲットがどこで情報を得ているかによって、使うべき媒体が変わるということです。この確認をせずに手法だけ持ち込むと、「やってみたけど何か違う」が起きます。
東京の手法は、間違っているのか
間違ってはいないと思っています。ファネルの設計、SNS広告、コンテンツマーケティング。理屈としてよくできている。
ただ、そのほとんどは首都圏、あるいは首都圏的な情報環境を前提に作られています。前提が違う市場に持ち込むと、手法の問題ではなく、前提の確認が抜けていることが問題になる。
地方では、マーケティングのファネル自体が少し違う経路をたどっている気がします。認知→興味→検討→購買という一般的な流れの前に、「信頼」がある場面が多い。「あの人がやってる店でしょ」「以前お世話になったから」。関係性が、購買の前段にすでにあるのです。
だから、見知らぬ人への認知を広げるより、すでにいるお客さんとの関係を深める方が先に効くことがある。地方で一番古くて一番強いチャネルは、口コミだったりします。東京発の手法は、そこをあまり教えてくれません。
「地方特化」を名乗るコンサルは、どこにいるのか
地方特化を名乗るコンサルティング会社は、少なくありません。ただ、その多くは東京に拠点を置いています。
これは批判ではなく、構造の話です。東京から見た「地方」と、地方に住んで事業をしている立場から見える「地方」は、同じではない。人手・予算・情報の制約は、資料の中の数字としてではなく、日々の前提として存在します。
WGYWは佐世保に住み、佐世保で事業をしています。提案する側自身が、提案先と同じ制約の中で意思決定をしている。経営相談の相手を選ぶとき、この一点は確認する価値があると思っています。
刺さらないもう一つの理由:順番が逆
地方でブランディングや集客の相談がうまくいかないとき、ほぼ共通したパターンがあります。「外から見たカッコいいイメージ」から始まっていることです。
ロゴを変える。サイトを刷新する。SNSを始める。やること自体は間違っていない。ただ、順番が逆なんです。
本当の問題は見た目ではなく、もっと手前にあります。「自分たちは、何のために、誰のために存在しているのか」が言葉になっていない。そこが曖昧なまま施策だけ積んでも、高いお金を払ったロゴとHPが出来上がり、中身は何も変わらない、ということが起きます。
東京のコンサルが刺さらないと感じるとき、実は施策の前のこの部分——課題そのものの言語化——が飛ばされていることが多い気がしています。
では、どう相談相手を選べばいいのか
手法の引き出しの多さより、先に確認したいことが二つあります。
一つは、あなたの市場の情報環境を確認しようとするかどうか。お客さんはどこで情報を得ているか、信頼はどこから生まれているか。この質問をせずに施策を提案してくる相手は、前提を持ち込んでいる可能性があります。
もう一つは、答えを渡す前に、課題を一緒に探そうとするかどうか。課題がまだ言葉になっていない段階なら、必要なのは提案書より対話かもしれません。この違いについては、壁打ちとコンサルティングは何が違うのかで書いています。
同じ制約の中にいる相手と、課題から話してみませんか。