先代のやり方を変えたい二代目が、最初にすべきこと
先代のやり方を変えたい。でも古参社員も取引先も先代のまま。二代目が最初にすべきは、変えることではなく、変える前の言語化かもしれません。
- 先代のやり方を変えたいとき、いきなり施策から入ると、たいてい社内の抵抗で止まります。順番が逆です。
- 最初にすべきは、「何を変えるか」ではなく「何のために変えるのか」を、自分の言葉にすること。
- 変革が続かないのは意志が弱いからではなく、変える理由が言語化されていないからだと思っています。
変えたいのに、変えられない
二代目社長からよく聞くのが、「先代のやり方を変えたいけれど、うまくいかない」という話です。
新しい仕組みを入れようとすると、古参の社員が動かない。取引先は「先代のときは」と言う。家族も渋い顔をする。結局、元のやり方に戻る。これを何度か繰り返すうちに、「変えるのは無理だ」という諦めが積もっていく。
ただ、これは意志や実行力の問題ではないことが多い気がしています。目標が途中で止まるのは、意志が弱いからではなく、プロセスの設計に理由がある。変革も同じで、「変える」という行動の前に、抜けているレイヤーがあるのだと思います。
いきなり「何を変えるか」から入らない
変えたい二代目が最初にやりがちなのは、施策から入ることです。システムを刷新する、評価制度を変える、新規事業を始める。やること自体は間違っていない。ただ、順番が逆なんです。
これは、地方企業のブランディングが失敗するパターンとまったく同じ構造です。ロゴを変える、サイトを刷新する、SNSを始める。外枠から入って、中身が変わっていないから、伝わらない。
変革でも、施策という外枠から入ると、社内には「なぜそれをやるのか」が伝わりません。伝わらないから、動かない。抵抗しているのではなく、理由が見えていないだけ、ということが多い。
最初にすべきは、「何のために変えるのか」の言語化
だから最初にすべきは、変えることではなく、変える理由を自分の言葉にすることだと思っています。
「先代のやり方が古いから」では足りません。それは先代の否定であって、自分の方向ではない。必要なのは、「自分はこの会社を、誰のために、何のためにやるのか」です。これが言葉になっていれば、個々の施策は「その方向に照らしてどうか」で判断できる。ブレなくなります。
ブランドは、対外的なものだと思われがちですが、実は社内の意思決定を支える軸でもあります。「これは自分たちらしいか」という問いが一つあるだけで、変革の一つひとつに理由が通る。逆に、この軸がないまま施策だけ動かすと、社内から「何のための投資だったんだ」という声が上がります。
先代を否定せずに、方向を変える
もう一つ大事なのは、先代を否定しないことだと思っています。
古参社員や取引先にとって、先代のやり方は自分たちが積み上げてきたものです。それを「古い」と切り捨てられると、自分自身を否定された気持ちになる。だから抵抗する。
変える理由が「先代は間違っていた」ではなく、「時代が変わったから、次の10年に合わせる」であれば、話が変わります。先代が10年前に描いた「今」に到達したうえで、環境が変わったから次の10年を描き直す。この立て付けなら、先代の功績を否定せずに、方向だけを更新できる。比較の土俵から降りつつ、過去を敵にしない。ここが、二代目の変革の勘所だと思っています。
変える前に、一度立ち止まる
正直に書くと、この「変える理由の言語化」は、日々の業務の中では後回しになりがちです。目の前の抵抗に対処しているうちに、そもそも何のために変えたかったのかが、ぼやけてくる。
だから、変える前に一度立ち止まって、それを言葉にする時間を持つ意味があります。一人だと途中で止まるので、外の人間に向かって話すのが早い。「それは先代への反発ですか、自分の方向ですか」と問い返してもらううちに、変える理由の輪郭がはっきりしてくる。
施策は、その後でいい。順番を守るほうが、遠回りに見えて、たぶん一番早いです。